第156章 顔を叩いて対称を求める

山﨑拓術は、逃げようともしなかった。というより――わざと顔を南坂海乃のほうへ差し出し、打たせた。

乾いた音。

張り手は容赦なく頬に吸い込み、瞬く間に赤い跡が浮かび上がる。

山﨑拓術は自分の頬を撫でながら、どこか壊れたような、粘ついた笑みをこぼした。

「今日の香水、すごくいい匂いだね。ベビー、気持ちよかった? 足りないなら、こっちの頬もどうぞ。まだ叩けるよ」

南坂海乃は、叩いた手のひらがじんじん痛んだ。

――やっぱり、この男は異常者だ。

だからこそ、正面からぶつかるのは危険。常識が通じる相手じゃない。まずはなだめて、状況を崩すしかない。

「……私のどこがそんなにいいの。そこ、直...

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